マリアンヌ・フェイスフル
英国ロンドン・ハムステッド出身。1964年にデビューシングル As Tears Go By をヒットさせ、清純派ポップアイドルとして人気を博す。映画界からもオファーを受け、アラン・ドロンと共演するなど女優としてもデビューを果たした。しかし60年代後半になると重度のドラッグ中毒とアルコール依存に陥り、度重なる逮捕やミック・ジャガーとの破局なども伴って、70年代半ばまで一転して破滅的な人生を歩んだ。79年にアイランド・レコードと契約しアルバム Broken English をリリース、アイドル路線から本格的なシンガー・ソングライターへと転身を計り、新たな才能を開花させた。スティーヴ・ウィンウッドはこのイメチェン作品に全面協力しているにも関わらず、クレジットに名前がない。これに関してマーク・ホジキンソン著 As Tears Go By に、「フェイスフルがドラッグの影響から抜けきれない状態にあり、スティーヴは何らかの形で全てのトラックに関与した。彼女はこのオーバーワークに憤慨して、スティーヴをクレジットに入れるのを拒み会話すらしなかった」というエピソードが掲載されている。また2013年にはデラックス盤がリリースされ、没になったオリジナル・ミックス全曲が発掘音源として収録された。こちらはマリアンヌ・フェイスフルのヴォーカルと小編成バンドによるシンプルな音作りで、彼女はこれに満足していたようだ。しかしプロデューサのマーク・ミラー・マンディは何らかの改良が必要と感じ、スティーヴを呼び寄せシンセサイザーやオルガンをオーバーダブさせた。両ミックスを聴き比べると音の違いは明らかだが、全てのリミックスがスティーヴの仕事かは不明。しかし収録曲のうち全曲か少なくとも6曲には関わっていると思われる。
アイランド・レコード2作目の Dangerous Acquaintances には、スティーヴ・ウィンウッドとマリアンヌ・フェイスフルの共作曲 For Beauty’s Sake が収録されている。スティーヴはこの曲を含めて数曲でシンセサイザーをプレイしているようだ。前作の仲違い説が事実なら2作目に参加している点に疑問を感じるが、こちらのアルバムにもスティーヴの名前はクレジットにない。一方で1998年にアイランド時代の音源をまとめたCD2枚組アンソロジー Perfect Stranger が編纂され、アルバム Broken English から6曲、Dangerous Acquaintances から5曲を収録している。曲毎のクレジットはないが、こちらにはスティーヴの名前が記されている。またこのアンソロジーには、88年2月に録音されたがお蔵入りになっていた、もうひとつの二人の共作曲 A Waste Of Time が収録されている。ただしスティーヴはこの曲のレコーディングには携わっていない模様。