ヴァン・モリソン
北アイルランドのベルファスト出身。50年代後半のティーンエイジの頃から音楽活動を開始し、1964年4月にゼムのリードヴォーカルとしてデビュー、66年にグループを抜けてからはソロミュージシャンとして活動している。長いキャリアを通じてアルバムリリース数は40枚を超え、自ら手掛けた楽曲数は300曲を超えている。特に60~70年代には名盤名曲が多く、ジャズミュージシャンを起用した Astral Weeks、ロックにジャズやソウルの要素を見事に融合させた Moondance、アイリッシュ・インスピレイションが生んだ Veedon Fleece、若々しいパフォーマンスを詰め込んだ2枚組のライヴ盤 It’s Too Late To Stop Now、それまでの音楽を集約させた Into The Music など、代表的なアルバムを発表している。ソウルフルで深味のあるヴォーカルと、R&Bやブルーズ、ジャズ、アイリッシュトラッドなどを吸収した高い音楽性を保ちつつ、現在までマイペースながらも自らのスタイルを貫き通している。
2015年リリースの本作は、ヴァン・モリソンが選んだゲストをスタジオに招いて、過去の自作曲をデュエットするというコンセプトのアルバムで、スティーヴ・ウィンウッド、ボビー・ウーマック、マーク・ノップラー、ジョージ・ベンソン、タージ・マハル、愛娘のシャナ・モリソンなど16名が参加している。しかしスティーヴとはスケジュールが合わなかったのか、二人のセッションは実現しなかった。インタビューで「残念ながらスティーヴとは一緒にできなかった。彼はホームスタジオで録音したものを送ってくれたけど、一緒に録ったようなサウンドで良い出来だ。彼はプロだからね」と語っている。デュエットナンバーの Fire In The Belly は、1997年作 The Healing Game からヴァン・モリソンがセレクトした。ベーストラックのレコーディング・スタジオは明記されていないが、スティーヴのヴォーカルパートとハモンドオルガンは、ウィンクラフト・スタジオにてジェイムズ・タウラーにより録音されている。二人のヴォーカルの掛け合いは見事で、ソロを含むグルーヴ感のあるオルガンも全編で鳴り響いている。オーバーダブとはいえヴェテラン二人による満を持しての共演でもあり、実に聴きごたえのある仕上がりになっていて一聴の価値がある。ヴァン・モリソンの記憶によると、スティーヴとは65年にバーミンガムのギグで始めて出会い、トラフィックが集うオクスフォードシャ近郊へ訪ねて行ったりもしたようだ。またジム・カパルディのアルバム Fierce Heart 収録の Tonight You’re Mine に、スティーヴと共にセッション参加している。