アルバム概要
スティーヴ・ウィンウッドとジム・カパルディは1994年、20年ぶりにトラフィックを再結成し、ロスコ・ジー、ランドール・ブラムレット、ウォルフレート・レイズ・ジュニア、マイク・マックヴォイをメンバーとする新バンドと共に、約半年にわたる米国ツアーで75以上もの公演を行った。その際にカメラクルーがツアーに同行し密着取材を行っており、これを記録した音源と映像が、11年後の2005年になってようやくCDとDVDのフォーマットでリリースされた。実はスティーヴとジムは、04年にトラフィックがロック殿堂入りしたのを機に活動の再開を計画、10月には米国ツアーをスケジューリングしていたが、残念ながらジムの体調が優れず結局キャンセルになった。ジムは新作アルバム用の歌詞を11曲ほど用意しており、その中には Tell Me How I Get To Heaven という死を予見したかのようなタイトルもあったという。05年1月28日にジムは胃ガンのために就寝中に他界、トラフィックの再始動は果たされずに終わり、最後の作品が94年のこのライヴ集としてまとめられた。スティーヴは「その男の存在なくしてトラフィックは決して成り得なかっただろう。わが生涯の友人そしてパートナー、ジム・カパルディに捧ぐ」という賛辞をジャケットに記している。同時に本作はジェリー・ガルシア、クリス・ウッド、リーバップ・クワク・バーにも捧げられている。また2年後の07年1月には、ジム・カパルディへのトリビュート・ライヴ A Celebration For Jim Capaldi が開催された。
音源のほうはボーナス映像付きデュアルディスク仕様のCDで、DVDサイドにはスティーヴとジムのインタビューが約20分と、随所にかつてのトラフィック時代の貴重な映像や写真が挿入されている。DVDのほうはライヴ本編の合間にバックステージやツアーバス、控え室、音声チェックなどの舞台裏や、インタビューなどが断片的に挿入されており、付録のボーナスCDには、スティーヴの自宅にて94年にデモレコーディングした3曲が収録されている。本編ライヴの収録曲は両盤共に同じで、Pearly Queen や John Barleycorn といったかつてのトラフィックの代表曲に加えて、ライヴでは初収録となる Walking In The Wind が注目に値する。最新アルバムからはインストの Mozambique のみピックアップされている。また94年7月のシカゴのソルジャー・フィールドにおける、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアをゲストに迎えた Dear Mr. Fantasy も見所・聴き所となっている。また2021年にはボーナス映像なしの再発盤が、スティーヴのウィンクラフト・レーベルからペーパースリーヴ仕様でリリース(Wincraft WM004)された。
ウッドストック・フェスティヴァル
トラフィックは1994年8月14日、ニューヨークのソーガティーズにて開催されたウッドストック・フェスティヴァルに出場し、上記セットリストにある11曲を演奏した。開催当時NHKがトラフィックの全ステージを衛星放送で生中継していた。バンドメンバーは再結成ツアーと同様、スティーヴ・ウィンウッドとジム・カパルディに、ロスコ・ジー、ランドール・ブラムレット、ウォルフレート・レイズ・ジュニア、マイク・マックヴォイを加えた6名。スティーヴのギター率が高いステージで、半分以上の曲で素晴らしいプレイを披露している。ジムは Rock And Roll Stew と、メンバー紹介を含む Light Up Or Leave Me Alone でヴォーカルを担当している。このフェスのハイライト版が Woodstock ‘94 のタイトルで、ポリグラムからCD、LD、VHSの各フォーマットでリリースされており、トラフィックのステージは Pearly Queen のみ収録している。また全曲版DVDはブートレッグのみで公式にはリリースされていない。
Thanks to Mr.Vappi for the knowledge of TV broadcast “Woodstock Festival 1994“.