アングロズを初収録した編集盤
オランダのBRミュージックから2003年にリリースされたコンピレイション。タイトル通り、スペンサー・デイヴィス・グループのシングルを中心に代表曲を収録しており、ウィンウッド兄弟在籍時の音源が14曲、脱退後のシングルが4曲という構成。Gimme Some Lovin’ はコーラスとパーカッションを加えたUSヴァージョン、Every Little Bit Hurts はストリングスを加えたUSヴァージョンが選ばれている。これにトラフィック初期のシングル6曲を追加し、ボーナストラックとしてジ・アングロズの Incense を収録している。スペンサー・デイヴィス・グループの英国盤シングルは、ピクチャースリーヴなしがほとんどだが、オランダ盤はピクチャースリーヴ付でリリースされたものが多く、ブックレットに多数掲載されていて興味深い。
ジ・アングロズの Incense は、スティーヴ・ウィンウッドが変名でリリースしたと噂されていたシングルで、本盤で初めてCD化された貴重な収録だった。ザ・パワーハウスやジョン・メイオールとのセッションに、スティーヴが「スティーヴ・アングロ」名義で参加していることや、編集盤 Eight Gigs A Week のライナーに掲載されたマフ・ウィンウッドのインタヴューで、この曲へのスティーヴの参加に言及していることなどから、スティーヴが関わっている可能性は大きいと考えられていた。しかし海外のファンサイトがスティーヴに事実関係を確認した結果、本人が「このレコードには一切関与していない」と明言したため参加説は撤回されている。実際に聴いてみると声色は確かにスティーヴと似ているが、発声方法が異なる印象もある。この曲に関して THE DIG 特別版には「Incense はジミー・ミラーがジ・アングロズとして発表した曲」と書いてあるが、ミラー本人はニューヨークのローカルバンドだと主張している。1965年に米国のオービット・レーベルからシングルでリリースされ、これを気に入ったクリス・ブラックウェルがプロデューサーのジミー・ミラーを英国に呼び寄せ、アイランド・レコードの新設レーベルであるブリットからリイシューしたという。その後、フォンタナ、アイランド本家など複数のレーベルから再発されている謎の多いシングルである。また作曲クレジットにはミラーに加え、アイランド・レコードなどでプロデュースやアレンジをしていたラリー・ファロンの名前がある。