スティーヴ・ウィンウッド公式録音記録:スペンサー・デイヴィス・グループ

Their First LP

The Spencer Davis Group

Spencer Davis GroupSpencer Davis Group
Side A
01. My Babe
(R.Hatfield/W.Medley) 2:38
02. Dimples
(J.L.Hooker/J.Bracken) 2:20
03. Searchin’
(J.Leiber/M.Stoller) 2:38
04. Every Little Bit Hurts
(E.Cobb) 3:27
05. I’m Blue (Gong Gong Song)
(I.Turner) 2:40
06. Sittin’ And Thinkin’
(S.Davis) 2:57
Side B
07. I Can’t Stand It
(S.McAllister) 2:09
08. Here Right Now
(S.Winwood) 3:12
09. Jump Back
(R.Thomas) 1:43
10. It’s Gonna Work Out Fine
(J.Seneca/B.Lee) 3:03
11.  Midnight Train
(A.Roy/G.Hicks) 2:40
12. It Hurts Me So
(S.Winwood) 2:54
Producer
Chris Blackwell
Musician
Spencer Davis (vo,g,hca)
Steve Winwood (vo,g,p,hca)
Muff Winwood (vo,b)
Pete York (dr)
Kenny Salmon (org) [04,08]
Peter Asher (p) [05]
Millie Small (vo) [05]
Recording
Apr. 1964-1965 :
Lansdowne Studios, London, England
Olympic Sound Studios, London, England
Release
Jul. 1965 : Fontana TL 5242, 687 343 TL/ UK
アルバム概要

スペンサー・デイヴィス・グループは英国のバーミンガムで結成されたバンド。サウスウェールズ出身のスペンサー・デイヴィスは、60年代初頭からバーミンガム大学で学業に励むかたわら、地元パブのゴールデン・イーグルでフォークやブルーズを歌っていた。同じ頃バーミンガム出身のマフ・ウィンウッドは、マフ・ウッディ・ジャズ・バンドを率いて活動しており、このバンドで弟のスティーヴがピアノを弾き、曲によってはヴォーカルも披露していた。スペンサーは少年スティーヴのプレイに惚れ込み共にバンドを組むことを提案、1963年初頭からセミプロ・バンドとして活動を開始した。スティーヴはリードヴォールに加え、リードギター、キーボード、ハーモニカを弾きこなし、弱冠15歳の最年少ながらバンドの要的な存在となった。スペンサーはリズムギターと曲によってはリードヴォーカルも担当、マフは自らのバンドではリズムギターだったがベーシストに転向した。ドラムズはヨークシャ出身のピート・ヨークで、エンジニアの仕事の傍らジャズバンドでプレイしておりスペンサーと面識があった。結成当初は単にリズム・アンド・ブルーズ・カルテット、あるいはスペンサー・デイヴィス・リズム・アンド・ブルーズ・カルテットなどと名乗っていたが、64年4月にクリス・ブラックウェルのマネージメントを得てアイランド・レコードと契約し、バンド名をスペンサー・デイヴィス・グループと改めた。バンド名を考案し最年長のスペンサーをリーダーに仕立てたのはマフのアイデアだったという。グループは5月にジョン・リー・フッカーの Dimples でシングル・デビューを果たした。

結成当初のスペンサー・デイヴィス・グループは、地元バーミンガムを中心に精力的にギグをこなし基礎固めを行い、ヒットこそしなかったが4枚のシングルをリリースした。そしてデビューから約1年後の65年7月にファーストアルバム Their First LP を発表、UKチャートの第6位に送り込んだ。ここに収録された12曲のほとんどはステージにおけるレパートリーで、大半がR&Bやブルーズのカヴァーで占められており、6曲はリリース済みのシングル両面曲で構成されている。メンバーのペンによる作品は3曲のみで、オリジナリティに欠ける点は否めないが、最初期の黒っぽいスタイルが明瞭に示されていると共に、ティーンエイジとは思えないスティーヴの力強いヴォーカルは、決して色褪せることのない魅力を放っている。スペンサー・デイヴィス・グループは、67年初頭にウィンウッド兄弟が脱退するまでの約3年の間に、英国で3枚のアルバムと9枚のシングルをリリースしている。これらはフィリップス・レコード傘下のフォンタナ・レーベルから配給されたが、原盤はアイランド・レコードが制作していた。

収録曲について

My Babe はザ・ライチャス・ブラザーズの曲。スペンサーとマフによるコーラスに、サビのパートでスティーヴが絡むというスタイルで、そのヴォーカルの威力は凄まじい。ギターソロとピアノもスティーヴがプレイしている。Dimples はステージにおける十八番だけに息のあった演奏を披露している。リードヴォーカル、リードギター、ハーモニカはスティーヴ。本家ジョン・リー・フッカーの再録ヴァージョンが同時期にヒットしたこともあり、このデビューシングルは不発に終わった。Searchin’ はザ・コースターズのヒット曲で、スティーヴの軽やかなピアノとポップセンス溢れるヴォーカルが魅力。 Every Little Bit Hurts はブレンダ・ハロウェイのモータウンヒットで、グループの定番曲になったゴスペル風のバラード。マフによると鍵盤楽器も巧みにこなすスティーヴの存在をアピールするため、ギターリフの曲より難しい作品をあえてサードシングルに選んだという。ケニー・サーモンがオルガンを追加。I’m Blue はアイク・ターナーの曲でミリー・スモールとのデュエット。My Boy Lollipop のヒットで知られるミリーは、クリス・ブラックウェルがジャマイカでスカウトした少女シンガーで、彼女の特徴あるヴォーカルに耳を奪われる。ピーター・アッシャーがピアノで参加している。Sittin’ And Thinkin’ はスペンサー作でリードヴォーカルとハーモニカも担当、デビューシングルのB面に収録されたグループの初レコーディング曲。

I Can’t Stand It はアイランド・レコードが英国での配給権を持っていた、米R&B系レーベル・スーに所属する女性デュオ、ソウル・シスターズの持ち歌。スティーヴのパワフルなヴォーカルとギターが炸裂するキャッチーな曲で、クリス・ブラックウェルの勧めで録音し、セカンドシングルとしてリリースされた。Here Right Now はスティーヴのオリジナル曲でミディアムテンポのブルーズ。遠方でのライヴを終えて疲れ切ったところに即興でレコーディングしたという。ピアノはスティーヴで、オルガンはケニー・サーモンが弾く。Jump Back はメンフィス系ブルーズマンのルーファス・トーマスの曲を独自にアレンジしたもの。スティーヴのリードヴォーカルに、スペンサーとマフがコーラスでサポートしている。It’s Gonna Work Out Fine はアイク&ティナ・ターナーのヒット曲。スティーヴのハイトーンヴォーカルが冴えるリズミカルなナンバーで、ステージでの定番曲だった。Midnight Train はセカンドシングルのB面曲。同名異曲が多いがベルファスト・ジプシーズやブリンズリー・シュウォーツが、スペンサー・デイヴィス・グループと同じヴァージョンで録音している。スティーヴはピアノに加えギターソロをオーバーダブしている。ラストの It Hurts Me So は、サードシングルB面に収録されていたピアノベースの可愛らしいバラード。スティーヴによると12歳の時に書いた初めてのオリジナル曲だという。

Thanks to Mr.Ruben for the knowledge of “Midnight Train”.

Their First LP + 9
Complete Collection Vol.1

The Spencer Davis Group

Spencer Davis Group
CD
01-12. Original Tracks
13. She Put The Hurt On Me
(L.Nelson) 2:40
14. I’m Getting Better
(E.Bruce) 2:11
15. I’ll Drown In My Own Tears
(H.Glover) 4:27
16. Goodbye Stevie
(S.Winwood/M.Winwood/S.Davis/P.York) 2:22
17. My Babe [US Version]
(R.Hatfield/W.Medley) 2:38
18. Searchin’ [US Version]
(J.Leiber/M.Stoller) 2:38
19. Every Little Bit Hurts [US Version]
(E.Cobb) 3:30
20. Midnight Train [US Version]
(A.Roy/G.Hicks) 2:45
21. Incense
The Anglos (J.Miller/L.Fallon) 2:25
Producer (Extra Tracks)
Chris Blackwell [13-16]
Chris Blackwell, Jimmy Miller [17-20]
Jimmy Miller [21]
Musician
Spencer Davis (vo,g,hca)
Steve Winwood (vo,g,p,org,hca)
Muff Winwood (vo,b)
Pete York (dr)
The Anglos [21]
Recording
Lansdowne Studios, London, England
Olympic Sound Studios, London, England
Release
2006 : Universal Island UCIY 93173/ Japan [Papersleeve]