Autumn ‘66
The Spencer Davis Group
- Side A
- 01. Together Till The End Of Time
(F.Wilson) 2:51
- 02. Take This Hurt Off Me
(D.Covay/R.Miller) 2:45
- 03. Nobody Knows You When You’re Down And Out
(J.Cox) 3:52
- 04. Midnight Special
(Traditional: Arranged by S.Davis) 2:13
- 05. When A Man Loves A Woman
(C.Lewis/A.Wright) 3:09
- 06. When I Come Home
(J.Edwards/S.Winwood) 1:57
- Side B
- 07. Mean Woman Blues
(C.Demetrius) 3:13
- 08. Dust My Blues
(R.Johnson/E.James) 2:37
- 09. On The Green Light
(S.Winwood) 3:05
- 10. Neighbour, Neighbour
(A.J.Valier) 3:19
- 11. High Time Baby
(S.Winwood/M.Winwood/S.Davis/P.York) 2:41
- 12. Somebody Help Me
(J.Edwards) 2:02
- Producer
- Chris Blackwell
- Engineer
- Bob Auger
- Photography
- Vic Singh
- Musician
- Spencer Davis (vo,g)
Steve Winwood (vo,g,p,org,hca)
Muff Winwood (vo,b)
Pete York (dr)
- Recording
- Lansdowne Studios, London, England
Olympic Sound Studios, London, England
Pye Studios, London, England [12]
- Release
- Sep. 1966 : Fontana TL 5359, 687 397 TL/ UK
アルバム概要
ハーフフェイス・ジャケットによるスペンサー・デイヴィス・グループのサードアルバム Autumn ’66 は、タイトル通り1966年秋の9月にリリースされ、UKチャートの第4位を記録した。本作発表までの間に6枚目のシングル Somebody Help Me が、Keep On Running に続き2枚連続のナンバーワンを獲得、数あるビートグループのなかでビッグネームの仲間入りを果たしていた。ツアーは英国各地に留まらずドイツや北欧など欧州各国へも遠征、また映画 The Ghost Goes Gear に主演するなど多忙な日々が続いた。同時にメンバーの技量も高まっていたようで、ピート・ヨークが「バンドはこの頃あらゆるタイプの曲をマスターし、音楽的な成長を実感していた」と語る通り、本作はオリジナルアルバムの中では最も充実した、聴き応えのある内容に仕上がっている。冒頭の Together Till The End Of Time を聴けば分かるように、バンドの演奏は手堅く、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルは若々しい力強さに加えて深味が増している。スペンサー・デイヴィス・グループは本作をリリースした後、代表作となるシングル Gimme Some Lovin’ と I’m A Man を生み出し、これらが米国でもチャートインし世界に羽ばたく兆しを見せたが、スティーヴはこの時期から脱退を考え始めていた。その要因にはメンバーとの年齢差ギャップもあったようた。スティーヴはより歳の近い仲間、例えばエリック・クラプトンとザ・パワーハウスなどで共演したり、ディープ・フィーリングのジム・カパルディ、デイヴ・メイスン、クリス・ウッドらと交流し、新しいジャンルの音楽に触れる機会を得ていた。67年4月にスティーヴとマフのウィンウッド兄弟は正式にグループ脱退を表明、その知らせを聞いたスペンサー・デイヴィスは相当ショックを受けたという。スティーヴはその直後にトラフィックを結成し新たな音楽活動を開始、マフはアイランド・レコードに入社しA&Rマンに転身した。スペンサーとピートは、新メンバーとしてフィル・ソウヤーとエディ・ハーディンを迎え、第2期スペンサー・デイヴィス・グループをスタートさせた。
収録曲について
ブレンダ・ハロウェイの Together Till The End Of Time は、ステージでも好んで歌われていた定番曲で、スティーヴのオルガンと表情豊かなヴォーカルには成長を感じさせる。Take This Hurt Off Me はソウル系シンガー・ソングライターのドン・コヴェイの作品。スモール・フェイシズもカヴァーしているが、両者とも母親が息子の名を呼ぶ歌詞を Don から Steve に変更しているのが面白い。ジミー・コックス作の Nobody Knows You When You’re Down And Out は、多くのミュージシャンにより歌い継がれているブル-ズ・スタンダード。グループのスローナンバーの中でも出色の出来映えで、スティーヴのディープなヴォーカルとピアノが素晴らしい。Midnight Special はレッド・ベリーらが歌っていたカントリー・ブルーズ。デビュー前からのスペンサーのレパートリーで、スティーヴはコーラスで加わる。パーシー・スレッジの大ヒット曲 When A Man Loves A Woman では、スティーヴがソウルフルなヴォーカルを披露する。When I Come Home はジャッキー・エドワーズとスティーヴの共作曲で、UKチャート第12位を記録した7枚目のシングル。
ロイ・オービソンのヒット Mean Woman Blues は、バンドの実力を証明する一曲でスティーヴの黒っぽいヴォーカルが魅力的。エルモア・ジェイムズの Dust My Blues は、スペンサーがリードヴォーカルをとる曲の中ではベスト。ステージにおける定番曲で、スティーヴのリードギターが聴きどころ。On The Green Light はスティーヴ作のオルガン・インスト。グループはこの種のものを数曲録音しているが、どれもジャズ・オルガンっぽいノリで弾きまくっていて、完全にスティーヴの独壇場だ。Neighbour, Neighbour はジャック・ブルースやグレアム・ボンドもカヴァーしているオールド・ブルーズで、リードヴォーカルはスペンサー。メンバー4人の共作による High Time Baby は、アップテンポの軽快な曲で、大ヒットシングル Keep On Running のB面に収録されていた。ラストの Somebody Help Me は6枚目のシングルとしてリリースされたジャッキー・エドワーズの作品。Keep On Running ほどのインパクトには欠けていたが、勢いに乗って2枚連続のナンバーワンヒットを記録した。
Autumn ‘66 + 8
Complete Collection Vol.3
The Spencer Davis Group
- CD
- 01-12. Original Tracks
- 13. Gimme Some Lovin’
(S.Winwood/M.Winwood/S.Davis) 2:57
- 14. Blues In F
(S.Winwood) 3:26
- 15. I’m A Man
(S.Winwood/J.Miller) 2:56
- 16. I Can’t Get Enough Of It
(S.Winwood/J.Miller) 3:43
- 17. Waltz For Lumumba
(S.Winwood) 4:19
- 18. Somebody Help Me [US Version]
(J.Edwards) 2:02
- 19. Gimme Some Lovin’ [US Version]
(S.Winwood/M.Winwood/S.Davis) 2:56
- 20. I’m A Man [Stereo Mix Version]
(S.Winwood/J.Miller) 2:39
- Producer (Extra Tracks)
- Chris Blackwell [13,14,17]
Chris Blackwell, Jimmy Miller [18,19]
Jimmy Miller [15,16,20]
- Musician
- Spencer Davis (vo,g)
Steve Winwood (vo,g,p,org,hca)
Muff Winwood (vo,b)
Pete York (dr)
Jim Capaldi (perc,vo) [15,19,20]
Chris Wood (perc,vo) [15,19,20]
Dave Mason (perc,vo) [15,19,20]
Jimmy Miller (perc) [15,19,20]
- Recording
- Lansdowne Studios, London, England
Olympic Sound Studios, London, England
- Release
- 2006 : Universal Island UCIY 93175/ Japan [Papersleeve]
ボーナストラック
スペンサー・デイヴィス・グループの3枚のオリジナルアルバムは、2006年に日本にて紙ジャケ仕様のリマスターCDで復刻リリースされた。サブタイトルで「コンプリート・コレクション」と銘打つ通り、オリジナルアルバムには未収録の豊富なボーナストラックを追加しており、3枚でスペンサー・デイヴィス・グループの公式録音曲の全てをカヴァーすると共に、米国マーケット向けにアレンジされた貴重なヴァージョン違いもほぼ網羅している。なお輸入盤のオリジナルアルバムは、現在までのところ正規にはCD化されていない。
Gimme Some Lovin’ はUKチャート第2位を獲得した8枚目のシングルで、スペンサー・デイヴィス・グループを代表する傑作。1966年当時のグループは上昇気流に乗っていたとはいえ、その人気を保ち続けるためにはシングルヒットが欠かせなかった。クリス・ブラックウェルは、ジャッキー・エドワーズの作品などいろいろな曲のレコーディングを勧めたが、メンバーはオリジナル曲で勝負したいと考えていた。レーベルサイドからのプレッシャーを真っ向から受けて時間に追い詰められたメンバーは、タイムリミット間際に素晴らしい曲のアイデアを思いついた。その際に即興で完成させたのがこの曲で、特徴ある2音階のベースリフにスティーヴのハモンドオルガンとソウルフルなヴォーカルが重なる。スティーヴ・ウィンウッドの若き日のマイルストーンといえる作品で、現在まで歌い継がれている永遠の名曲。Blues In F はこのシングルのB面に収録されていた、ジミー・スミス風のハモンドオルガンによる即興インストナンバー。何曲かあるオルガンインストの中では最も聴き応えがある。
I’m A Man はトラフィックのメンバーを迎えて録音されたウィンウッド兄弟在籍時のラストシングルで、UKチャート第9位を記録。プロデューサーのジミー・ミラーとスティーヴが共作したこの曲は、Gimme Some Lovin’ と双璧をなすスペンサー・デイヴィス・グループの傑作。数多あるビートグループのヒット曲とは一線を画す、渋さと黒っぽさを伴う秀逸なナンバー。67年のアイランド・べスト盤 The Best Of The Spencer Davis Group にも収録されている。同じくジミー・ミラーとスティーヴの共作で、I’m A Man とカップリングされていた I Can’t Get Enough Of It は、A面ほどの強烈なインパクトはないが完成度は非常に高い。Waltz For Lumumba はオルガンベースのファンキーなインストルメンタルで、トラフィックのメンバーが録音に参加。アイランド・べストのほか、サントラ盤 Here We Go Round The Mulberry Bush に Waltz For Caroline のタイトルで収録されている。
終盤の3曲はいずれもオリジナルとは異なるヴァージョンを収録している。ギターに替えてオルガンをオーバーダブした Somebody Help Me は、66年6月に米国にてシングルでのみリリースされた貴重なヴァージョン。USヴァージョンを多く収録するユナイテッド・アーティスツ盤 I’m A Man にも入っておらず、87年に米EMIがリリースしたCD編集盤 The Best Of The Spencer Davis Group でようやく聴けるようになった。ジミー・ミラーが再プロデュースしたUSヴァージョンの Gimme Some Lovin’ は、トラフィックのメンバーによるバックコーラスとパーカッションが加えられている。この派手なヴァージョンのほうが露出度が高く、先述のアイランド・べストなど多くの編集盤はこちらを採用している。一方シンプルで黒っぽい英国オリジナル・ヴァージョンは、CDでは96年の編集盤 Eight Gigs A Week と、このリマスター盤にしか収録されていないと思われる。ラストの I’m A Man のステレオミックス・ヴァージョンは、先述の米EMIのCD編集盤が初出となる音源。