スティーヴ・ウィンウッド公式録音記録:ブラインド・フェイス

Blind Faith

Blind Faith

albumalbum
Side A
01. Had To Cry Today
(S.Winwood) 8:48
02. Can’t Find My Way Home
(S.Winwood) 3:16
03. Well All Right
(N.Petty/B.Holly/J.Allison/J.Mauldin) 4:27
04. Presence Of The Lord
(E.Clapton) 4:50
Side B
05. Sea Of Joy
(S.Winwood) 5:22
06. Do What You Like
(G.Baker) 15:20
Producer
Jimmy Miller
Arrangement
Robert Stigwood, Chris Blackwell
Engineer
Andy Johns, George Chkiantz, Keith Harwood, Alan O’Duffy
Cover Art
Bob Seidemann (Cover Photo)
Mick Milligan (Space Ship Built)
Stanley Miller (Cover Design)
Musician
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (vo,org,p,g,b)
Ginger Baker (dr,perc)
Rick Grech (b,vn)
Recording & Mix
Feb.-Jun. 1969 :
Morgan Studios, London, England (Recording)
Olympic Studios, London, England (Recording/Mix)
Release
Aug. 1969 : Polydor 583 059/ UK

Blind Faith [US/German Edition]

Blind Faith

album
US Edition
album
German Edition
Side A
01-04. Original Tracks
Side B
05-06. Original Tracks
Producer
Jimmy Miller
Release
Jul. 1969 : ATCO SD 33-304/ US
Aug. 1969 : Polydor 184 302 / Germany
ブラインド・フェイス

ブラインド・フェイスはトラフィックのスティーヴ・ウィンウッド、クリームのエリック・クラプトンとジンジャー・ベイカー、ファミリーのリック・グレッチによるユニット。実質的な活動期間は半年にも満たないがメンバーの顔ぶれからスーパーグループと称されて大きな注目を集めた。クラプトンの言葉を借りると「ミュージシャンとしての資質とバンドをまとめる能力を持つ唯一の人物」であるスティーヴとの共演を望んだのは、クラプトンのほうからだったという。二人がセッションを開始したのは1969年の2月頃で、バークシャー郊外のアストン・ティロールドにあるトラフィック所縁のコテージで、酒を飲んで気ままに語り合ったりギターを弾いたりして楽しんでいた。ジンジャー・ベイカーがそのコテージを訪ねて来たのは間もなくのことで、クラプトンはクリーム時代の仲間の介入を快く思わなかったが、スティーヴは彼を歓迎したようだ。やがてトラフィックのプロデューサーだったジミー・ミラーがプロジェクト入りし、ファミリーのリック・グレッチがベーシストとしてバンドに加わった。英米を巡るワールドツアーのスケジュールが定まり、サリーにあるクラプトンの自宅で数週間リハーサルを重ねながら、アルバム用のレコーディングが開始された。バンド名の由来は諸説あるが、アルバムタイトルと同じブラインド・フェイスに落ち着いた。

デビューは6月7日のロンドンのハイドパークにおけるフリーコンサートだった。会場には10万人以上の観衆が集まったといわれ、その模様はロバート・スティッグウッドらによって映像化が試みられたが当初は未発表に終わった。新曲のレパートリーが少なかったことから、ステージではサム・マイヤーズの Sleeping In The Ground や、ローリング・ストーンズの Under My Thumb、トラフィックの Means To An End も演奏された。この後ロンドンでのレコーディングを挟みながら北欧ツアーを実施し、レコーディングを全て終えてから米国ツアーに出発、デビューコンサートは7月12日のマディソン・スクウェア・ガーデンだった。米国各地のコンサートではこれまでのセットリストに加えて、観客の要望に応えるようにクリームの Sunshine Of Your Love と Crossroads がレパートリに加わっていた。米国ツアーをサポートしたのはデラニー&ボニー&フレンズとフリーだった。ブラインド・フェイスの公演は8月24日のハワイ・ホノルルをもって終了、その後の活動記録は残されていない。帰国後スティーヴはジンジャー・ベイカーが結成したエア・フォースに参加し、クラプトンはデラニー&ボニーと行動を共にしているので、ユニットは事実上消滅していたことになる。

アルバム概要と収録曲

ブラインド・フェイス唯一のアルバムは1969年8月にリリースされ、英米ともにチャートの首位を獲得、最初の1週間だけで50万枚以上を売り上げたという。アルバムの6曲中半数を作曲し、全曲でヴォーカルをとっているスティーヴのサウンド指向が強く、クラプトンが「メンバーにスティーヴがいるのなら、リーダーは彼で従うだけ」と発言をしているのにも頷ける内容となっている。またレコーディングについては、比較的早い時期に完成していた Presence Of The Lord と Well All Right は、69年2月にロンドンのモーガン・スタジオで、残りの4曲は5~6月にロンドンのオリンピック・スタジオで行われた。オープニングの Had To Cry Today はスティーヴの作品で、クラプトンとのツインギターが聴きどころのマイナー調ハードロック・ナンバー。左右チャンネルから流れるギターがどちらのプレイか、想像しながら聴くのも面白い。Can’t Find My Way Home は現在でもステージで歌い継がれているスティーヴの代表曲で、アコースティック・ギターの素朴な音色とファルセット・ヴォーカルが魅力。フォーク調へのアプローチはプロデューサーのジミ・ミラーが提案したもので、原曲はクラプトンのギターが活躍するエレクトリック・ヴァージョンだった。バディ・ホリーのロックンロール Well All Right は、アルバム中唯一のカヴァーソングで、素朴な原曲と比べるとアーバンテイストな仕上がりになっている。スティーヴの軽やかなピアノプレイが素晴らしく、またリック・グレッチ参加前の録音なのでベースもスティーヴがプレイしている。

スピリチュアル・ソング風の Presence Of The Lord は、クラプトンの代表作のひとつで初期タイトルは Lord Protector だった。スティーヴの味わい深いソウルフルなヴォーカルと、中盤で炸裂するクラプトンのギターソロを含め、インパクトの強さではアルバム中随一といえる。クラプトンの自伝によると、この曲の歌い方をスティーヴに色々と指南したところ「俺に歌い方の指図はしないでくれ、自分の曲なんだから自分で歌うべきだろう!」と言い放ったという興味深いエピソードが語られている。またクラプトンはこの曲で「ついに生きるべき道を見つけた」と告げるのに対し、スティーヴは Can’t Find My Way Home で「家に帰る道が分からない」と歌っている違いが面白く、皮肉にもそんな2曲が短命に終わったブランド・フェイスを代表している。スティーヴ作の Sea Of Joy はトラフィックっぽい香りのする幻想的な曲で、グレッチのヴァイオリンを効果的に使い牧歌的な雰囲気を演出している。全編に渡りスティーヴの研ぎ澄まされたハイトーンヴォイスによる、スリリングなヴォーカル・パフォーマンスを堪能できる。ラストを飾るジンジャー・ベイカー作の Do What You Like は、ジャズ的な展開を見せる15分超えの長尺ナンバー。ポール・デズモンドの名作 Take Five のリズムを寸借し、前半はヴォーカル入りで主にスティーヴが牽引、後半ジャムセッションに流れ込むとベイカーによる白熱のドラムソロを含め、各メンバーによるセッション風のインタープレイが展開される。Ginger Baker’s Air Force でもこの曲を取り上げており、スティーヴのヴォーカルによるライヴ・ヴァージョンを聴くことができる。

ブラインド・フェイスのアルバムは、ヌードの少女がペニスを連想させる飛行機型のオブジェを持つデザインが猥褻だという理由から、英国以外でのリリースの際に、メンバーの写真仕様などのデザインに変更された。ジャケットをデザインしたボブ・サイドマンによると、オブジェは「人類の創造力の功績とテクノロジーによるその表明であり、知識の木になる実」と説明、また女の子については「無垢だが女性へと成長しつつある少女、生命の木になる実」と解説している。オブジェは王立芸術大学の精密機械技師ミック・ミリガンによって作られ、性的なシンボルであると同時に、音楽や生命への近代的・未来的な接近を象徴した飛行機の模型であるとされる。

Change Of Address [Single]
From June 23rd 1969

Blind Faith (No Credit)

album
Single
 A. Change Of Address From June 23rd 1969
Basing Street, London, W.11. England
New Telephone No: 10-229-1229
 B. Sales Office
Music House, 12 Neasden Lane, London, N.W.10. England
Telephone No: 10-459-6212
Producer
Jimmy Miller
Musician
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (org)
Ginger Baker (dr)
Guy Warner (perc)
Release
Jun. 1969 : Island No Number/ UK [Limited]

Well All Right [Single]

Blind Faith

album
Dutch Edition
album
French Edition
album
German Edition
Single
 A. Well All Right
(N.Petty/B.Holly/J.Allison/J.Mauldin) 4:22
 B. Can’t Find My Way Home
(S.Winwood) 3:16
Producer
Jimmy Miller
Musician
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (vo,org,p,g,b)
Ginger Baker (dr,perc)
Rick Grech (b) [B]
Release
Oct. 1969 : Polydor 59 356/ The Netherlands
1969 : Polydor 59 356/ Germany
1969 : Polydor 421 500/ France

Presence Of The Lord [Single]

Blind Faith

album
Italy Editon
album
Japan Edition
Single (Italy)
 A. Presence Of The Lord
(E.Clapton) 4:40
 B. Sea Of Joy
(S.Winwood) 5:15
Single (Japan)
 A. Presence Of The Lord
(E.Clapton) 4:40
 B. Can’t Find My Way Home
(S.Winwood) 3:15
Producer
Jimmy Miller
Musician
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (vo,org,p,g,b)
Ginger Baker (dr,perc)
Rick Grech (b,vn) [B]
Release
1969 : Polydor 59371/ Italy
1970 : Polydor DP-1667/ Japan
シングル・リリース

アイランド・レコードは1969年6月に、Change Of Address From June 23rd 1969 という500枚限定のシングルをプレスしている。これはアイランド・スタジオの住所変更をメディアに知らせるという目的で制作したもので、レーベルにはロンドンのベイジング・ストリートの新住所と連絡先、裏面にはセールスオフィスの住所と連絡先が印刷されていた。収録曲は両面ともブラインド・フェイスによるインストルメンタル作品だが、作曲者クレジットはない。なおこの音源のスローヴァージョンが、Change Of Address Jam としてデラックス盤に収録されている。通常のシングルについては、69年10月以降に Well All Right が Can’t Find My Way Home とのカップリングで、オランダ、ドイツ、フランスなど欧州各国でリリースされ、イタリアでは Presence Of The Lord が Sea Of Joy とカップリングでリリースされた。アメリカでは、Can’t Find My Way Home と Presence Of The Lord のカップリングによるプロモ・シングルが存在しているが、一般流通のものは同じ曲目で77年にリリースされたのが初で、その後89年にも再発されている。日本では Presence Of The Lord と Well All Right の2枚が69年にシングルカットされている。

Blind Faith [Deluxe Edition]

Blind Faith

album
CD 1
01-06. Original Tracks
07. Sleeping In The Ground
(S.Myers) 2:49
08. Can’t Find My Way Home [Electric Version]
(S.Winwood) 5:40
09. Acoustic Jam
(S.Winwood/E.Clapton/R.Grech/G.Baker) 15:50
10. Time Winds
(S.Winwood) 3:15
11.  Sleeping In The Ground [Slow Blues Version]
(S.Myers) 4:44
CD 2
01. Very Long And Good Jam
(E.Clapton/S.Winwood/G.Baker) 14:01
02. Slow Jam No.1
(E.Clapton/S.Winwood/G.Baker) 15:06
03. Change Of Address Jam
(E.Clapton/S.Winwood/G.Baker) 12:06
04. Slow Jam No.2
(E.Clapton/S.Winwood/G.Baker) 16:06
Compilation Producer
Bill Levenson
Artwork
Vartan, 142design.com, Andy Engel
Photography
David Gahr
Musician
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (vo,org,p,g,b)
Ginger Baker (dr,perc)
Rick Grech (b,vn) [CD 1]
Guy Warner (perc) [CD 2]
Recording
Feb.-Jun. 1969 :
Morgan Studios, London, England
Olympic Studios, London, England
Mar. 1969 : Morgan Studios, London, England [CD 2]
Release
Jan. 2001 : Polydor 549 529-2/ US

Blind Faith [CD Reissue]

Blind Faith

albumalbum
CD
01-06. Original Tracks
07. Exchange And Mart
(Unknown) 4:13
08. Spending All My Days
(Unknown) 3:00
Producer
Jimmy Miller
Musician (Extra Tracks)
Rick Grech (b,vn,vo)
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (mdln,key)
George Harrison (g)
Denny Laine (b)
Alan White (dr)
Recording (Extra Tracks)
Oct. 1969 : Morgan Studio, London, England
Release
Apr. 1986 : RSO 825 094-2/ Germany

Blind Faith [24K Gold CD/SACD]

Blind Faith

album
24K Gold CD
album
SACD
CD
01-06. Original Tracks
Producer
Jimmy Miller
Release
1988 : Mobile Fidelity Sound Lab UDCD 507/ US [Gold CD]
Aug. 2010 : Polydor UIGY 9031/ Japan [SACD/Papersleeve]
デラックス盤ほか各種CD

2001年に発売された2枚組のデラックス盤には、オリジナルの6曲に加えアウトテイクとジャムセッションがCD2枚に収められている。ディスク1収録 Can’t Find My Way Home のエレクトリック・ヴァージョンは、アルバム収録のヴァージョンより早い時期から演奏しており、デビューコンサートではこちらを披露している。エリック・クラプトンのギターをフィーチュアしたパワフルなアレンジで聴き応えがある。Sleeping In The Ground はスローブルーズ編を含めた2ヴァージョンを収録、共にアウトテイクとは思えない完成度を誇る。クラプトンの定番ブルーズ・ギターとスティーヴ・ウィンウッドのソウルフルなヴォーカルの絡みは、かつてのザ・パワーハウスのセッションを思い出させる。スティーヴ作のポップな曲調の小品 Time Winds は、歌詞を付ける前の試作インストナンバーとして貴重な音源。メンバー共作の Acoustic Jam は15分超えのフリーセッションで、スティーヴのピアノが全体をリードする。ディスク2は1969年3月に録音されたジャムセッション集で、リック・グレッチが加入する前だったので、スティーヴがオルガンのフットペダルでベースパートを兼任し、クラプトン、ジンジャー・ベイカーに、パーカッショニストのガイ・ワーナーを加えた4名でプレイしている。同セッションではリトル・ウォルターの Key To The Highway や、ボブ・ディランの One Of Us Must Know をベースにしたジャムも行われていたようだ。

1995年に登場したスティーヴのボックスセット The Finer Things にも、ブラインド・フェイスの貴重な音源が3曲収録されている。まず先述のデラックス盤とは別ミックスの Can’t Find My Way Home のエレクトリック・ヴァージョン、それにハイドパークにおけるデビューギグから2曲のライヴ音源、すなわち Sleeping In The Ground とローリング・ストーンズの Under My Thumb である。また86年のブラインド・フェイスのドイツ盤CDには、作曲者不明の未発表曲 Exchange And Mart と Spending All My Days が追加収録されている。しかしこの2曲は米国ツアー終了後の69年10月に、リック・グレッチのソロアルバム用に録音された音源といわれており、ブラインド・フェイスのアウトテイクではない。同セッションに参加したメンバーはリック・グレッチ、エリック・クラプトン、スティーヴ・ウィンウッド、ジョージ・ハリスン、デニー・レイン、アラン・ホワイトで、スティーヴは Exchange And Mart でマンドリン、Spending All My Days でハープシコードをプレイしているという。後者では珍しいグレッチのヴォーカルが聴ける。

高音質盤CDとしては、1988年に米国モービル・フィデリティ社リマスタリングによる、ゴールドディスク仕様のCDがリリースされた。また2010年には初のSACDが日本でリリースされた。SHM素材シングルレイヤーのDSDリマスターで特製折りたたみ式紙ジャケット仕様。両盤共にボーナストラックは未収録となっている。

London Hyde Park 1969 [DVD]

Blind Faith

album
album
CD Edition
DVD
01. Well All Right
(N.Petty/B.Holly/J.Allison/J.Mauldin)
02. Sea Of Joy
(S.Winwood)
03. Sleeping In The Ground
(S.Myers)
04. Under My Thumb
(M.Jagger/K.Richards)
05. Can’t Find My Way Home
(S.Winwood)
06. Do What You Like
(G.Baker)
07. Presence Of The Lord
(E.Clapton)
08. Means To An End
(S.Winwood/J.Capaldi)
09. Had To Cry Today
(S.Winwood)
Extra Contents
01. I’m A Man [Promo Video]
The Spencer Davis Group (S.Winwood/J.Miller)
02. Hole In My Shoe [Promo Video]
Traffic (D.Mason)
03. I’m So Glad [Promo Video]
Cream (S.James)
Producer
Robert Stigwood
Musician
Eric Clapton (g)
Steve Winwood (vo,org)
Rick Grech (b,vn)
Ginger Baker (dr)
Recording
Jun. 1969 : Live in Hyde Park, London, England
Release
Sep. 2006 : Sanctuary 06076 88423 9/ UK [DVD]
Jan.2020 : London Calling LCCD5050/ UK [CD]