豪華4枚組みボックスセット
スティーヴ・ウィンウッドの約25年間の音楽活動を集約した、CD4枚全63曲からなる初のボックスセット・コンピレイションCD。1964年にスペンサー・デイヴィス・グループのメンバーとしてデビューしてから、トラフィックやブラインド・フェイスなどのバンド活動を経て、ソロミュージシャンとして活躍を続ける90年までの軌跡を年代順に辿る。本作はアイランド・レコードが編纂し95年にリリースしたものだが、途中で移籍したヴァージン・レコードからリリースした2枚のソロアルバムの音源も含んでいる。選曲はかなり良く練られており4枚のディスクへの曲配分も妥当である。また付属ブックレットに掲載のスティーヴに関するエッセイは簡潔で興味深く、様々な時代の珍しい写真も多いので楽しめる。全時代を俯瞰できるアンソロジーとしての役割を十分果たした内容で、コアなファンにとっても魅力的なアイテムといえる。なお The Finer Things というタイトルは、アルバム Back In The High Life 収録曲からとられている。
スペンサー・デイヴィス・グループとエリック・クラプトン&ザ・パワーハウス、それに初期トラフィックからの選曲で構成されたディスク1は、貴重な音源はないものの代表曲を網羅した妥当なセレクション。パーカッションとコーラス入りの Gimme Some Lovin’ と、ストリングスが入った Every Little Bit Hurts はUSヴァージョンが選ばれている。パワーハウスの What’s Shakin’ からは、スティーヴがリードヴォーカルをとった2曲を収録している。ディスク2にはブラインド・フェイスの貴重な音源を3曲収録している。まずアルバムに収録されたものより先に演奏されていた Can’t Find My Way Home のエレクトリック・ヴァージョン、それからハイドパークにおけるデビューコンサートから2曲のライヴ音源、すなわちサム・マイヤーズの Sleeping In The Ground とザ・ローリング・ストーンズの Under My Thumb である。スティーヴは「あのギグはベストな状況ではなかった」と述べているが、ストーンズの曲をスティーヴが歌っているのは注目に値する。ディスク後半はトラフィック後期のアルバムからセレクトされている。
ディスク3はスティーヴの幅広い音楽活動を集約したバラエティ豊かな内容で、トラフィックの後期やソロ初期の曲のほか、アフリカのミュージシャンたちと組んだサード・ワールドの Aiye-Keta 、日本人パーカッショニストのツトム・ヤマシタらと組んだ Stomu Yamashta’s Go からの曲を収録している。特にCD化されていないGOの2曲の音源は貴重といえる。ディスク4の注目曲は Your Silence Is Your Song。これは83年のフランス映画 They Call It An Accident のサントラ用に書かれた曲で、シングルリリースもされたがCDで聴けるのはこの編集盤のみ。その他はソロアルバムからのセレクションだが、収録時間の都合でエディットされている曲もいくつかある。これらはフルヴァージョンを知っていると物足りなく感じるが、アンソロジーなので少しでも多くの曲を収録するというアイランド・レコードの意向を尊重したい。また Roll With It からの終盤3曲は、レーベルを超えてヴァージン・レコードから選ばれている。
【追記】Can’t Find My Way Home のエレクトリック・ヴァージョンは、ミックス違いが Blind Faith [Deluxe Edition] に収録された。ツトム・ヤマシタのアルバム Go と Go-Live From Paris は、2004年に公式にCD化された。Your Silence Is Your Song は、2005年のコンピレイション The Ultimate Collection にも収録された。