スティーヴ・ウィンウッド公式録音記録:ソロアルバム

Arc Of A Diver

Steve Winwood

Steve WinwoodSteve Winwood
Side A
01. While You See A Chance
(S.Winwood/W.Jennings) 5:13
02. Arc Of A Diver
(S.Winwood/V.Stanshall) 5:28
03. Second Hand Woman
(S.Winwood/G.Fleming) 3:41
04. Slowdown Sundown
(S.Winwood/W.Jennings) 5:27
Side B
05. Spanish Dancer
(S.Winwood/W.Jennings) 6:00
06. Night Train
(S.Winwood/W.Jennings) 7:50
07. Dust
(S.Winwood/G.Fleming) 6:20
Producer & Engineer
Steve Winwood
Second Engineer
John Clarke
Design
Tony Wright
Photography
Fin Costello
Musician
Steve Winwood (vo,all-instruments)
Recording & Mix
1979-80 : Netherturkdonic Studios, Gloucestershire, England
Release
Dec. 1980 : Island ILPS 9576/ UK
CD Reissue
Feb. 2007 : Island UICY-90332/ Japan [Papersleeve]
アルバム概要

内容的には充実していたファーストアルバムではあったが、商業的には成功を収めたとはいえず、ソロミュージシャンとして再スタートを切ったばかりのスティーヴ・ウィンウッドは、音楽業界のなかで非常に厳しい状況にあったようだ。スティーヴは当時を振り返り「あの頃は本当に苦境に立たされていた。だから自分に言い聞かせたんだ。もう一枚だけ渾身の力を込めてアルバムを作り、それで成果を出せなければあきらめよう」と語っている。そんなプレッシャーとの戦いに打ち勝つべく、1979年から制作を開始し80年の12月にリリースされたこのセカンドアルバムは、クオリティが非常に高いだけでなくセールス面においても大きな成功を収めるに至った。本作は全米チャート第3位というビッグヒットを記録し、全世界で700万枚以上という好セールスを上げてプラチナ認定を獲得、さらに While You See A Chance のシングルヒットも放つなど、ソロキャリアを代表する作品のひとつとなった。くすんだグリーン地にダイヴァーのアートワークが特徴的なジャケットは、トラフィックの変形ジャケでお馴染のトニー・ライトがデザイン、内袋やシングル盤などに掲載された写真はフィン・コステロが撮影している。

本作の大きな特徴は、アルバムのほとんど全てをスティーヴが単独で作り上げた点にある。作詞にウィル・ジェニングスらの協力を仰ぎ、レコーディング・アシスタントにトラフィック時代からの旧友ジョン・クラークを招いた以外、プロデュース、作曲、演奏、エンジニアリングなど、アルバム制作に係わるほとんど全ての工程をスティーヴが独りで行っている。さらにレコーディングからミックスまでも、英国グロスターシャの自宅敷地内に設立したニザータークドニック・スタジオにて実施しており、まさに文字通りのソロアルバムとなっている。アルバムの完成までには実に2年もの長い歳月を費やしたという。それは小人数による地道な作業だったということもあるが、それ以上にスティーヴの最後の挑戦であり、納得できるまでやり尽くすという決意が完璧主義的な方向に導いたのだろう。自宅スタジオに引き籠もり単独作業を続けることに対し、レコード会社からは批判的な意見も多々あったという。しかし初心を貫いたスティーヴは本作をヒットさせて、ソロミュージシャンとして本格的なスタートを切ることができた。

収録曲について

トラフィック時代からの作曲仲間ジム・カパルディがブラジルに居を移していたこともあり、スティーヴは新しいパートナーとして、米国人の作詞家ウィル・ジェニングスに白羽の矢を立てた。本作で4曲の歌詞を提供したジェニングスによれば、While You See A Chance は「前作の結果に落ち込んだスティーヴを復活させるためのウェイクアップ・コール」だという。メロディアスで温もりのあるシンセ・サウンドに包まれたこの曲は、全米チャート第7位のヒットを記録し、本当にスティーヴを目覚めさせるカンフル剤となった。タイトル曲 Arc Of A Diver はトラフィック時代から付き合いのある友人、ヴィヴィアン・スタンシャルの作詞による。二人の共作はトラフィックの Dream Gerard、ファーストアルバムの Vacant Chair に続いて3曲目になるが、相変わらず特徴のある不思議な音世界が展開されおり、聴き込むほどに味わいが増す。Second Hand Woman はユニークな曲構成とモーグなどのシンセ・ソロが印象的。作詞したジョージ・フレミングは、テキサス州フォートワース出身のロカビリー系シンガーで、1959年に自身のレーベルからシングルを1枚リリースしている。スティーヴとの接点は不明ながら、後年 Freedom Overspill も共作しており、共に女性に対し卑屈な歌詞が面白い。Slowdown Sundown はマンドリンやピアノなどのアコースティック楽器に、ハモンドオルガンやシンセサイザーを絶妙に絡め合わせた味わい深い作品。1983年の The ARMS Concert でも取り上げていた。

全体的にポップな作風のなかで少々難解に感じる曲が Spanish Dancer だろう。不協和音っぽいメロディと独特の浮遊感がクセになる個性派ソングながら、セカンドシングルとしてカットされた。この曲の初期マスターは1分強の短い断片で、その部分のヴォーカルは少々歪んだまま残されているという。2010年に再録まで行ったことからスティーヴお気に入りの曲と思われる。Night Train はシンプルな曲構成にも関わらず8分近い長さをまったく感じさせない、持ち前のブラックフィーリングに溢れた秀逸な曲。サード・シングルとしてカットされ、12インチ盤にはアルバムとは異なるミックスのヴァージョンを収録、そのB面のインスト・ヴァージョンもアルバムのバックトラックとはミックスが異なっている。終曲の Dust はもうひとつのジョージ・フレミングとの共作曲。温もりのあるシンセサイザーによって奏でられる珠玉のバラードで、美しいメロディーに伸びやかなヴォーカルが心地よくマッチしている。

Arc Of A Diver [Deluxe Edition]

Steve Winwood

Steve Winwood
CD 1
01-07. Original Tracks
CD 2
01. Arc Of A Diver [US Single Version]
(S.Winwood/V.Stanshall) 4:16
02. Night Train [Instrumental Version]
(S.Winwood/W.Jennings) 6:44
03. Spanish Dancer [2010 Version]
(S.Winwood/W.Jennings) 6:13
04. Arc Of A Diver: The Steve Winwood Story
Presented by Kate Thornton
(Originally aired on BBC Radio 2) 56:33
Producer & Engineer
Steve Winwood
Remaster
Loud Mastering
Release
Oct. 2012 : Universal Island 5339903/ UK