アルバム概要
アルバムタイトルには、スティーヴ・ウィンウッドとナラダ・マイケル・ウォルデン、それに大勢の共演者が本作を通じてジャンクション=合流したという意味があり、これにソロ第7作目を示す数字を付け加えたという。マルチプレーヤーであり敏腕プロデューサーとしても活躍してきたマイケル・ウォルデンを、共同プロデューサー兼アレンジャーとして起用した本作は、スティーヴが「ポップソウル・アルバム」と定義したように、音楽経験豊かな二人のポップ&ソウル感覚が適度にミックスされた作品に仕上がっている。レコーディングは主に、マイケル・ウォルデン馴染みのカリフォルニアのターパン・スタジオと、スティーヴが所有する英国のニザータ-クドニック・スタジオを拠点とし、ミックスはスティーヴのスタジオにて行われた。ゲストにはナイル・ロジャーズ、デズリー、レニー・クラヴィッツ、ルビー・ターナーらが招かれている。セッションプレイヤーには、次作でスティーヴのバンド・メンバーとなるジョゼ・ネトとウォルフレート・レイズ・ジュニア、再編トラフィックのツアーメンバーだったマイク・マックヴォイが含まれる。またトランペット奏者でホーン・アレンジャーとしても名高いジェリー・ヘイも参加している。
作曲は主にスティーヴとナラダ・マイケル・ウォルデンがペンを共にし、作詞は長年タッグを組んできたウィル・ジェニングスと別れ、再び旧友のジム・カパルディに数曲を委ね、妻ユージニアにも何曲か任せている。また彼女の名はディレクターとプロジェクトマネージャーにもクレジットされている。演奏面においてはハモンドオルガンやキーボードはもちろん、インナースリーヴの写真からも推測できるように、ギタープレイにもかなり力を注いでおり、ほとんどのソロはスティーヴ自身が弾いているという。久々のアルバム・リリースに期待するレコード会社の意向や、スティーヴとマイケル・ウォルデンの制作意欲も強く感じられ、多様なジャンルを積極的に取り入れたバラエティ豊かでヒット性を意識した内容であるが、本作はあまり話題にならず評価も芳しくない。前作のリリースから時間が経ち過ぎたのもひとつの要因かもしれないし、マイケル・ウォルデンとの音楽的相性がミスマッチだったという見解もある。しかしスティーヴのまったく衰えを感じさせないソウルフルなヴォーカルと揺るぎない演奏には、いつもと変わらない大きな魅力があることも事実。
収録曲について
Spy In The House Of Love はスティーヴの力強いヴォーカルとギターソロをフィーチュアした、ナラダ・マイケル・ウォルデン流の華やかなロックナンバー。5月に先行シングルとしてリリースされた。Angel Of Mercy はグルーヴィなハモンドオルガンが印象的なミディアムテンポの曲で、スティーヴはウーリッツァ・ピアノやワウペダル・ギターも弾いている。Just Wanna Have Some Fun と Let Your Love Come Down は、女声コーラスとの掛け合いが面白いブラックフィーリング溢れる曲で、ジェリー・ヘイがホーン・アレンジを担当。前者でスティーヴはハモンドオルガンとクラヴィネットに加えシンセサックス・ソロも披露、後者にはレニー・クラヴィッツが参加しカッティング部を演奏、リードギターとソロはスティーヴが弾いている。Real Love はジェリー・ヘイのアレンジによるストリングスを加えたメロウな曲で、スティーヴのピアノが奏でる旋律が美しい。夫婦のことを歌ったと思われる歌詞はユージニアが担当。Fill Me Up はウィンウッド夫妻で書かれた曲で、随所に入る Thy will be done というフレイズはユージニアの声。バックヴォーカルはジャマイカ出身でバーミンガム在住のルビー・ターナーが歌っているが、スティーヴは彼女のアルバム Restless Moods に参加しデュエットした経緯がある。
Gotta Get Back To My Baby は軽快なサルサ風ナンバーで、ウォルフレート・レイズのファミリーを含め、キューバのミュージシャンを起用しかなり本格的なラテンサウンドを展開している。この路線は次作でスティーヴ流に消化されて大きく花開くことになる。Someone Like You はミディアムテンポの甘いラヴソングで、スティーヴは珍しくヴォーカルのみに徹している。歌詞は主にユージニアが書いている。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの Family Affair は、ソロアルバムに収録した初のカヴァー。原曲の泥臭さをあえて捨て、洗練されたアーバンソウル風にアレンジされている。ニューヨークにあるナイル・ロジャーズのル・クリブ・スタジオにて共演、CHICの日本公演 Live At The Budokan の際に亡くなったバーナード・エドワーズに捧げられた。Plenty Lovin’ は英国出身のポップ・ソウルシンガー、デズリーとのデュエット。彼女をマネイジメントしている英ソニーS2レコードの重役、マフ・ウィンウッドを通じて実現した共演と思われる。マイク・マックヴォイがシンセ・ストリングスとキーボードで参加、ジョゼ・ネトがアコースティックギターとナイロンストリング・ギターでソロを弾いている。Lord Of The Street では、スティーヴはハモンドオルガン、ピアノ、クラヴィネット、リズムギターとマルチに演奏しており、楽しげな雰囲気でアルバムを締め括っている。