リミックス収録のアイランド・ベスト
デビュー以来在籍していたアイランド・レコードへの置き土産として、1987年にリリースされたスティーヴ・ウィンウッドのソロ初のベスト盤。スティーヴは翌年の Roll With It からヴァージン・レコードに移籍した。本作はベスト盤ながらプラチナディスクを獲得しており、当時のスティーヴの人気が非常に高かったことを証明している。過去4枚のソロアルバムから10曲をセレクトした内容で、ファーストアルバムから1曲、その他のアルバムからは3曲ずつ選曲されている。ただしサードアルバム Talking Back To The Night からの3曲は、リミックス・ヴァージョンでの収録となっている。注目すべきは、ヴィヴィアン・スタンシャルが歌詞を書いた3曲が全て本作に収録されている点で、スティーヴとスタンシャルの相性の良さを物語っている。
リミックスはエンジニアのトム・ロード・アルジと共に、ナッシュヴィルのスタジオで行われた。スティーヴは当時の最新テクノロジーに大きな興味を持っていたようで、新ヴァージョンの3曲はドラムズなどの楽器の差し替えやエコー処理などが施され、ホームレコーディングによるシンプルだったサウンドに華やな彩りが加えられた。サードアルバムからのみリミックス対象曲が3曲も選ばれた背景には、スティーヴがこの時の自宅録音に少なからず不満を感じていた可能性がありそうだ。86年のミュージックライフのインタビューでも、「キーボードのプログラミングやエンジニアリングにかなり多くの時間を費やしてしまい、曲作りや歌ったりプレイしたりという音楽面の制作時間が割かれしまった」という主旨の発言をしている。Valerie のリミックス・ヴァージョンは、オリジナルに続く2度目のシングルリリースで全米第9位のヒットを記録、Help Me Angel も全体的にパワフルなサウンドに生まれ変わり、Talking Back To The Night には全編にサックスが加えられるなど、本来この曲が持っていた退廃的な夜の雰囲気がリアルに表現されている。