発掘音源を収録したデラックス盤
2011年3月にリリースされた John Barleycorn Must Die のデラックス盤ディスク1には、オリジナルトラックの6曲が収録されている。これまでのリマスター盤はボーナストラックがオリジナル曲の狭間に収録されていて違和感があったが、これが解消された。また新たに24ビット・デジタルリマスターが施され、音圧がより増した印象を受ける。ディスク2には、未発表音源3曲とニューヨークのフィルモアイーストにおけるライヴ音源から7曲の計10曲が収録されている。未発表音源のうち Stranger To Himself と Every Mother’s Son はオリジナルヴァージョンのミックス違いで、タイトル曲の John Barleycorn は初期ヴァージョンである。ミックス違いの2曲はオリジナルと比べてそれほど大きな違いはないが、タイトル曲のほうはジム・カパルディのヴォーカルとタンバリンが入ってなく、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルとギターに、この曲をメンバーに紹介したクリス・ウッドのフルートのみによる演奏で、オリジナルと比べてシンプルなアレンジとなっている。ライナーノーツによるとミックス違いの2曲は、1969年10月以降にモーガン・スタジオにてガイ・スティーヴンズのプロデュースで録音。タイトル曲の初期ヴァージョンは、11月23日にオリンピック・スタジオで録音されたものと推測できるが、明確なクレジットはない。
4曲目以降のライヴ音源は、70年11月18日と19日にニューヨーク・フィルモアイーストで収録されたもので、71年にリリース予定だったが発売中止になった、幻のライヴ盤 Live Traffic と同じステージからの選曲。同アルバムの収録曲が正確には分からず、ここに収録された7曲以外にも Dear Mr. Fantasy、Pearly Queen、Heaven Is In Your Mind、John Barleycorn、Means To An End の5曲の音源が存在しているため、果たして Live Traffic とデラックス盤の内容が同一なのかは不明である。また Live Traffic のリリース前に英米の音楽誌が掲載したアルバム収録予定曲リストには、18日にアンコールでプレイした Can’t Find My Way Home が入っていたが、この音源の存在は今のところ確認できていない。メンバーはスティーヴ・ウィンウッド、ジム・カパルディ、クリス・ウッドに加え、リック・グレッチがベースと一部でギターを担当している。
【参考】英国盤リマスターCD John Barleycorn Must Die に収録されている Glad と Who Knows What Tomorrow May Bring も、70年11月のフィルモアイーストで収録されたものだが、デラックス盤に収録の両曲のパフォーマンスとは、ランニングタイムも含めて明らかに異なるので、18日と19日の各ステージの音源がそれぞれに収録されている可能性がある。
レコーディング・スタジオ
デラックス盤に掲載のマーク・パウウェル著ライナーノーツを読むと、オリジナル盤にあるレコーディング・スタジオのクレジットに疑問が生じる。オリジナル盤のクレジットにはオリンピック・スタジオとアイランド・スタジオの2箇所が記載されているが、ライナーによると Stranger To Himself と Every Mother’s Son は、1969年10月8日以降にモーガン・スタジオにて録音したと読める。またオリンピック・スタジオでは、69年11月23日にタイトル曲を録音したようだが、記述内容からするとこれはデラックス盤に収録の未発表ヴァージョンを指すと推測できる。ライナーの記述が正しいとすると、オリジナル盤のクレジットはモーガンとオリンピックを間違って記載した可能性がある。アイランド・スタジオについては、70年2月以降にタイトル曲を含めた残りの4曲を録音したと書いてあるので、クレジットと矛盾はない。なおエンジニアにクレジットされているブライアン・ハンフリーズはアイランド・スタジオ担当として、もう一人のアンドリュ・ジョンズは、当時モーガン専任だったようだがオリンピックでも仕事をしていた。