アルバム概要
意外にもスティーヴ・ウィンウッドのソロとしては初となる公式ライヴアルバムで、2003年の About Time に次ぐウィンクラフト・ミュージック第2作目のレーベル番号が与えられ、2017年9月1日に欧米で同時にリリースされた。フォーマットはCDとアナログ盤が用意され、後者にはMP3音源のダウンロード権利が付与されていた。収録曲数は全23曲でCDはデジパック仕様の2枚組、アナログ盤は4枚組8面のゲートフォールド仕様になっており、ワンサイド3曲(4面のみ2曲)収録されている。なおアナログ盤の曲順はCDと一部異なり、Back In The High Life Again が Had To Cry Today の次に配置されている。これは収録時間の都合だと思われるが、曲の流れからすると、ブラインド・フェイス~トラフィック~ソロ・ナンバーと続くCDの配列のほうが自然といえる。
2008年作 Nine Lives からすでに9年が経過し、ライヴ活動は毎年継続しているものの、新作アルバムの制作のほうはすっかりご無沙汰となってしまった。しかも本作における主導権は、ウィンクラフト・スタジオの専属エンジニアであるジェイムズ・タウラーにあるようで、スティーヴ自身がアルバムの選曲を含めた制作サイドにどれだけ携わっているのかは不明、プロデューサーのクレジット表記もない。しかし本作発売に関するインタビューでスティーヴは、「長年にわたって行われた自分のパフォーマンスやファンのリアクションが思い起こされるので、ライヴ盤が発売されるのを嬉しく思っている。ライヴ盤は、ファンが自分のライヴで経験した心地よい記憶を思い起こさせてくれる記念品のようになることを望んでいる(Shige氏ブログより)」とコメントしている。
【参考】ウィンクラフト・ミュージックのレーベル・カタログについて。先述の通り2003年作 About Time に最初の作品番号WM0001が与えられ、続くWM002が本作 Winwood Greatest Hits Live に付与されている。さらに2021年に3枚の再発盤がウィンクラフトからリリースされており、WM0003がボーナストラック付の About Time(オリジナルはサンクチュアリ・レコード)、WM004が再編トラフィックのライヴ盤 The Last Great Traffic Jam(オリジナルはエピック・レコード)、WM005が Nine Lives(オリジナルはコロンビア・レコード)に与えられている。なお2枚の About Time の作品番号が一桁多い理由は不明。
収録曲について
収録内容に関しては期待を裏切らない非常に素晴らしいもので、Greatest Hits Live というタイトル通り、スティーヴ・ウィンウッドの長いキャリアから代表的な作品が満遍なく選曲されている。それと同時にエリック・クラプトンとのツアーで初披露した、バディ・マイルズ作の Them Changes のソロライヴ編、前作 Nine Lives 収録の心地よいバラード Fly、トラフィック時代の Empty Pages や Rainmaker、ソロ時代の Arc Of A Diver など、やや通好みの往年のファンを喜ばせるような楽曲も収録されている。クレジットに各曲の収録年等のデータが記載されていないので明確ではないが、CD1枚目の全曲と2枚目の4曲目までは、ミュージシャン・クレジットに名を連ねている2006年以降のメンバーによるステージから選ばれていると思われる。特に1枚目は実際にライヴに行けないファンへの期待にも十分応えるような、聴きごたえたっぷりの充実した演奏が全編に渡り繰り広げられている共に、まるでワンステージのライヴを体感しているかのような曲構成になっている。スティーヴはこの辺りの曲について、「10~15年ほど一緒にやっているバンドとは、ライヴで期待されている曲や有名な曲を、また新たなスタイルで演奏しようと試みている。その方が私たちも楽しいし聴く側もそう感じてくれるんじゃないかな。そのうちにリリースできるくらいの曲が集まり、しかもなかなか興味深いものになった。レコードの曲を単にライヴでプレイしただけじゃない内容になっているよ」と語っている。
一方でこれに続く2枚目の 40,000 Headmen から John Barleycorn までのトラフィック・ソング4曲は、1994年の再結成ライヴを収録した The Last Great Traffic Jam から横流ししたもので、これを持っているファンからすると少々残念なセレクトと言わざるを得ない。しかし終盤の4曲に関しては90年代末期のソロツアーからの選曲と思われ、While You See A Chance や Arc Of A Diver など非常に興味深いアレンジによる演奏を楽しむことができる。この辺りの音源をもっと沢山収録してくれたら嬉しかった、と思うファンも少なくないだろう。
また本作のプレミア公開曲として Empyt Pages のライヴが動画で紹介されたが、この曲の誕生についてスティーヴは、「自宅近くの森で過去のツアーを振り返りながら歩いていたら、石につまづいて泥にはまってしまった。帰宅してRMIという新しいエレクトリックピアノを弾いていたら、歌詞とメロディが一気に浮かんだんだ」と発言している。スティーヴが作曲の経緯について語ることは稀なのだが、同曲のオリジナル・ヴァージョンが収録されている John Barleycorn Must Die の作曲者クレジットには、ジム・カパルディの名前が共作者として入っていた。一方で本作はスティーヴのみのクレジットになっている。
Thanks to Mr.Shige’s weblog for the knowledge of “Winwood Greatest Hits Live”